脱炭素社会の構築
脱炭素社会を構築するために、地球温暖化防止への貢献を最優先課題として位置づけ、製品使用時の排出量と事業所の活動全般におけるエネルギー使用を削減し、バリューチェン全体におけるCO2 排出量の極小化をめざしています。
取り組みの考え方
当社にとって地球温暖化への対応は、単なるリスクではなく、技術を活かした製品力での差別化および環境に配慮した生産活動の両面で、事業を行う上での「機会」であると認識しています。そこで、グローバル環境宣言で掲げる「脱炭素社会の構築」に向け、「2050年にめざす姿」の中で「グローバルでのCO2ゼロ」を掲げ、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量削減に取り組んでいます。製品開発では電動化をはじめとしたさまざまな分野で環境配慮型製品の技術開発を進めています。また、生産活動では、「徹底した省エネ活動の推進」、「再生可能エネルギー(以下、再エネ)・水素の活用」を柱として活動しています。具体的な取り組みとしては、生産工程におけるロスを徹底的に省き、エネルギーの利用効率を向上させた上で、太陽光をはじめとした再エネや水素などクリーンエネルギーの積極的な導入を行っていきます。
TCFD提言への賛同
2019年12月にTCFD※1提言への賛同を表明しました。当社は、気候変動に関するリスクと機会を重要な経営課題と認識しており、CSR重要課題の一つとして取り組みを進めています。2021年11月には、産業車両関連事業においてシナリオ分析を実施し、TCFDが推奨する開示項目である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について情報開示を行いました。
※1 Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略。G20からの要請に基づき、2015年に金融安定理事会により気候関連の情報開示および金融機関の対応をどのように行うかを検討するため設立されたタスクフォース
<ガバナンス>
取締役会の下位の会議体に、気候変動を含む当社の経営ビジョンや中期経営戦略を扱うマネジメントコミッティ、環境委員会を組織し、気候変動対応に関する重要事項を協議しています。環境委員会は取締役社長が委員長を務め、CO2排出量の目標達成状況などの気候変動に関する主要な管理指標について中長期目標の策定、進捗管理、省エネに関わる投資など、環境経営推進上の重要事項について審議・フォローを実施しています。
<戦略>
気候変動のリスクと機会が当社に与える影響を把握するために、主要事業である産業車両事業についてシナリオ分析を実施しました。時間軸としては中期経営計画と長期環境ビジョンの2030年と2050年としました。選択したシナリオは移行リスクが顕在化する「2℃シナリオ」および物理リスクが顕在化する「4℃シナリオ」を設定しました。分析にあたり気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書「代表的濃度経路に関する将来シナリオ(RCP2.6、8.5シナリオ)」、国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlook より「持続可能な開発シナリオ(SDS)」、「公表政策シナリオ(STEPS)」を参照しました。
シナリオ分析前提条件
分析条件 | |
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対象事業 | 産業車両事業 |
対象範囲 | バリューチェーン |
時間軸 | 2030年と2050年 |
シナリオ | 2℃未満シナリオと4℃シナリオ |
出所:気象庁 気候変動2013 自然科学的根拠 政策決定者向け要約
各シナリオにおける当社を取り巻く社会像
2℃未満シナリオ | 4℃シナリオ | |
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市場 | ・物流量、輸送量増大、物流施設の分散化 ・倉庫自動化、無人搬送車(AGV)、自律走行搬送ロボット(AMR)市場拡大 |
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・電動・燃料電池フォークリフトの需要拡大 | 2℃未満の社会像に比べ影響は緩慢 | |
政策・規制 | ・炭素税導入による操業費用・調達費用上昇 ・気候変動の緩和に向けた新たな規制 ・既存の規制強化 |
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評判 | ・気候変動関連の情報開示要求強化 ・ESG投資拡大 |
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自然環境 | 4℃の社会像に比べ影響は緩慢 | ・慢性的な気温の上昇 ・洪水の発生頻度増加 ・海面上昇 |
上記シナリオが事業に与えるリスク・機会のうち影響が大きなものを抽出しました。その上で、例えば、気候変動緩和に向けた規制強化による売上減少のリスクや環境性能に優れた製品の需要拡大による売上増加の機会を特定し、CSR重要課題の目標として掲げ、事業戦略へ織り込んでいます。
シナリオ分析による財務影響の評価
短期・中期・長期の気候関連のリスクと機会、 | ||
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リスク | 移行リスク (2℃未満) |
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・炭素税導入により操業費用が増加 | ||
・炭素税の価格転嫁により材料・部品の調達費用が増加 | ||
・気候変動の緩和に向けた新たな規制・既存の規制強化による内燃機関車両需要減少に伴い売上が減少 | ||
・気候変動関連の情報開示が投資家に消極的と判断された場合、株式市場での評価が低下 | ||
物理リスク (4℃) |
・自然災害(大雨による冠水等)によるサプライヤーの操業停止や物流機能への被害により売上が減少 | |
機会 | ||
・環境性能に優れた製品の需要拡大により売上が増加 (電動化、水素燃料、バイオ燃料車両の拡大など) |
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・自然災害に対する強靭な物流の構築に向けた物流拠点分散化に伴う小型物流倉庫増加により売上が増加 | ||
・物流倉庫内の照明・空調からのCO2排出量の低減を目的とした物流倉庫無人化により自動化製品の売上が増加 |
リスクと機会への対応
リスクと機会への対応 | |
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生産 | ・生産活動におけるCO2排出量削減 ・再エネの効率的な導入促進 ・水素設備の実証導入 ・水素サプライチェーンの構築に貢献 |
製品 | ・環境問題を含めた社会課題解決に貢献する新たな技術・製品の開発 ・新たな物流自動化技術・製品の開発と販売拡大 ・電動化関連製品の販売拡大 ・クリーンで高品質な燃料電池ユニットおよび車載電池の提供 |
情報 開示 |
・情報開示の充実、コミュニケーション強化 ・グローバルスタンダードに準じたGHG算定 ・第三者認証の取得 |
<リスク管理>
気候関連リスクについては、当社のCSR重要課題の一つとして明確に定義し、全社のリスク管理の仕組みの中でマネジメントしています。
気候関連のリスク影響の緩和に向けて管理指標・目標を明確にし、取締役社長をトップとする環境委員会の中で定期的にモニタリングを行っています。
<指標と目標>
気候変動によるリスクを緩和し機会を拡大するために、製品、生産面において中長期目標を定めています。
目標
Scope 1, 2については、生産・業務プロセスの改善、高効率・省エネ設備導入、生産プロセスの電化、再エネ・水素等のクリーエネルギーへの燃料転換などを実施します。Scope 3については、製品の電化や高効率化、軽量化、物流においては積載効率、輸送効率などの削減などを行い、CO2の削減を図ります。
当社の生産活動による排出量 | Scope 1 | 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス) |
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Scope 2 | 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出 | |
当社の生産活動以外による排出量 | Scope 3 | Scope 1, 2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出) 例えば、当社製品の使用、廃棄段階での発生する排出量 |
<生産>
年度 | CO2排出 | 再エネ導入率 | |
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目標 | 2025年度 | 2013年度比 25%減 | 15% |
2030年度 | 2013年度比 50%減 | - | |
2050年度 | ゼロ | - |
※ 第七次環境取り組みプランから基準年、排出係数等一部変更
<製品>
年度 | CO2排出 | |
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目標 | 2025年度 | - |
2030年度 | - | |
2050年度 | CN |
活動実績
Scope 1, 2
第七次環境取り組みプランでは、2025年度までに生産活動におけるCO2排出量(グローバル)を2013年度比で25%削減することを目標として活動しています。2023年度は設備の電動化や、生産順序の変更による省エネ化に加え、再エネの積極的な導入を推進するなどのCO2削減活動により、目標を達成することができました。
※このグラフは、一部の拠点において目標管理に適した範囲および係数を用いて作成しているため、データライブラリーの数値と異なります。
Scope 1, 2, 3
2023年度の実績は、Scope 1とScope 2の排出量の合計が2.1%、Scope 3の排出量が97.9%を占めました。また、最も排出量が多い領域は、Scope 3のカテゴリ11(製品の使用段階での排出)で、Scope 1, 2, 3全体の83.1%を占めました。
取り組み事例
豊田自動織機レポート2024 P.22-36
製品 「事業の取り組み」
豊田自動織機レポート2024 P.42
生産 「廃液処理の蒸気使用工程廃止によるCO2削減」
豊田自動織機レポート2024 P.42
生産 「エアコンプレッサーの排熱利用による省エネ」
豊田自動織機レポート2024 P.43
生産 「生産順序の見直しによるエネルギー消費量の低減」