コーポレート・ガバナンス

当社は、基本理念のもと、誠実に社会的責任を果たすことで社会の信頼を獲得し、長期安定的な企業価値の向上をめざしています。そのために、コーポレート・ガバナンスを一層充実させ、経営の効率性と公正性・透明性の維持・向上をはかっていきます。

ガバナンス体制

コーポレート・ガバナンスに対する基本的な考え方

当社は、「基本理念」に基づき、誠実に社会的責任を果たすことで、社会から広く信頼を得て、長期安定的に企業価値を向上させることを経営の最重要課題としています。事業活動を通じて豊かな社会づくりに貢献することを基本に、株主やお客様、取引先、債権者、地域社会、従業員などのステークホルダーとの良好な関係を築くことが重要と考えています。

こうした考えのもと、経営の効率性と公正性・透明性を維持・向上するため、経営環境の変化に迅速かつ柔軟に対応できる体制を構築するとともに、経営の監督機能強化や情報の適時開示などに取り組み、コーポレート・ガバナンスの充実をはかっています。

具体的には、以下の項目を基本方針として取り組みを進めています。

  1. 株主の権利・平等性の確保に努めます。
  2. 株主以外のステークホルダー(お客様、取引先、債権者、地域社会、従業員など)との適切な協働に努めます。
  3. 適切な情報開示と透明性の確保に努めます。
  4. 透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うため、取締役会の役割・責務の適切な遂行に努めます。
  5. 株主との建設的な対話に努めます。

推進体制

当社は取締役会を毎月開催することで、経営に関わる重要事項の決定および取締役の職務執行の監督を行っています。
社外取締役につきましては、会社経営などにおける豊富な経験や高い識見を有する方を選任しています。
取締役会において、グローバル展開する企業経営やモノづくりに関する幅広い分野など、各々の経験や知見をもとに適宜意見・質問をいただくなど、社外取締役の監督機能を通して、客観的視点からも、取締役会の意思決定および取締役の職務執行の適法性・妥当性を確保しています。
一方で、ビジョン、経営方針、中期経営戦略、大型投資などの経営課題や各事業部門における重要案件については、取締役会での審議に先立ち、社長、副社長、チーフオフィサー、監査役および議案に関わる経営役員などで構成する「マネジメント・コミッティ」で、さまざまな対応を協議しています。

「業務執行会議」では、社長、副社長、チーフオフィサー、経営役員などをメンバーとして、月々の業務執行状況の報告・確認、事業・機能課題等の協議を行っています。

また、品質、生産、人事等の各機能において課題を審議する機能会議や、コンプライアンス、リスク管理、サステナビリティ、環境、安全衛生、輸出取引管理などの特定事項を審議する委員会を設置し、それぞれの分野における重要事項やテーマについても協議しています。なお、法規認証問題を踏まえ、再出発委員会を設置し、再発防止の取り組みを推進しています。
さらに、内部監査室を設置し、当社各部門および子会社への監査を通じて、内部統制の維持・向上をはかっています。

経営陣幹部の選解任、取締役・監査役候補の指名

■経営陣幹部選任(解任を含む)、取締役・監査役候補指名に関する方針と手続き

取締役においては、経営全般における的確かつ迅速な意思決定、適切なリスク管理、および業務執行の監視のできる候補者を、監査役においては、財務・会計・法務に関する知見、当社事業分野に関する知識、および企業経営に関する多様な視点のバランスを確保しながら、適材適所の観点より候補者を指名しています。経営陣幹部においては、業務執行において、会社の各機能と各事業部門をカバーできるバランスを考慮しながら、適材適所の観点より選任しています。

また、職責を十分に果たすことができない事由が生じた場合には、解任を検討します。

これらの方針に基づき、原案を検討し、取締役社長および独立社外取締役を委員とし、委員長と委員の過半数を独立社外取締役とする「役員人事・報酬委員会」において、意見の交換および内容の確認を行った上で、取締役会に上程し、決議しています。

■取締役・監査役の経験・専門性マトリクス

独立役員の指定

当社は、上場会社として、経営の公正性・透明性の確保に努めています。東京、名古屋の各証券取引所による有価証券上場規程に基づき、株主の皆様と利益相反の生じるおそれがないと判断した社外取締役3名および社外監査役2名を独立役員として指定し、コーポレート・ガバナンスの一層の充実をはかっています。

取締役および監査役の報酬決定

■取締役の個人別の報酬などの内容に係る決定方針に関する事項

●基本的な考え方
・公正性、透明性を確保しています。
・業績向上や持続的成長へのインセンティブを重視し、会社業績との連動性を確保し、職責と成果を反映しています。
●報酬の体系
・取締役の報酬は、基本報酬としての固定報酬、業績連動報酬としての賞与と譲渡制限付株式報酬で構成しています。
・但し、社外取締役等の業務執行を伴わない取締役は、業務執行から独立した立場であることから、固定報酬のみとしています。
●個人別の報酬の決定方法
・取締役社長、独立社外取締役より構成する「役員人事・報酬委員会」を設置しています。
・その客観性及び透明性を確保するため、委員長と委員の過半数を独立社外取締役としています。
・「役員人事・報酬委員会」は、本方針、取締役の個人別報酬案、その他報酬に関する重要事項について審議しています。
・取締役会は、「役員人事・報酬委員会」の審議結果を踏まえ、本方針を決議しています。
・取締役会は、個人別報酬額の決定を、柔軟かつ機動的に行う観点から、取締役社長(もしくは取締役会長)へ委任しています。
・取締役社長(もしくは取締役会長)は、「役員人事・報酬委員会」の審議結果を踏まえ、本方針に従って、取締役の個人別の報酬額を決定しています。
●報酬の構成割合
・社外取締役等の業務執行を伴わない取締役を除く取締役の固定報酬と業績連動報酬(賞与及び譲渡制限付株式報酬)との比率は50:50を目安としています。但し、当該連結営業利益額等の状況に応じて、上記と異なる比率とすることを妨げないものとしています。
・業績連動報酬のうち、賞与と譲渡制限付株式報酬との比率は、70:30を目安としています。
●固定報酬、賞与(以上、現金報酬)、及び譲渡制限付株式報酬の決定方針
<現金報酬>
固定報酬と賞与を合わせた取締役の現金報酬の限度額は、年額7億円以内(うち社外取締役分1.5億円以内)〈第146回定時株主総会決議〉とされています。
【固定報酬】
・取締役の固定報酬は月額報酬とし、在任中、定期的に支給しています。
・ 個人別の報酬額は、他社水準を参考としながら、取締役の役位とその職責を勘案し、妥当な水準を設定しています。
【賞与】
・賞与は、各事業年度において当該定時株主総会の終了後、一定の時期に支給しています。
・賞与は、連結営業利益を指標とし、前事業年度の連結営業利益額に応じ役位毎に算定する業績連動報酬の合計額の70%を目安としています。但し、当該取締役に譲渡制限付株式報酬を付与することが相当でない事由がある場合には、業績連動報酬の合計額の100%としています。
・業績連動報酬の合計額の決定にあたっては、配当、従業員賞与水準、他社水準、過去の支給実績、職責と担当業務の遂行状況等も総合的に勘案しています。

<譲渡制限付株式報酬>
・ 譲渡制限付株式報酬は、各事業年度において当該定時株主総会の終了後、一定の時期に付与しています。
但し、当該取締役に譲渡制限付株式報酬を付与することが相当でない事由がある場合には、当該取締役の業績連動報酬の全額を賞与として支給するものとし、譲渡制限付株式報酬は付与しないものとしています。
・ 譲渡制限付株式報酬の付与のために支給する報酬は金銭債権とし、その総額は、取締役の固定報酬、及び賞与とは別枠で年額2億円以内、割り当てる株式の種類は普通株式(割当契約において譲渡制限を付したもの)を発行または処分、その総数は合計で年6万株以内(但し、当社の発行済株式総数が、株式の併合または分割(株式無償割当てを含む)によって増減した場合は、当該上限数はその比率に応じて調整される)〈第146回定時株主総会決議〉とされています。
・ 譲渡制限付株式報酬は、連結営業利益を指標とし、前事業年度の連結営業利益額に応じ役位毎に算定する業績連動報酬の合計額の30%を目安としています。
・ 譲渡制限付株式報酬の付与については、以下の内容を含む割当契約書の締結を条件とするものとしています。
 ― 割当株式には割当日より3年から30年の間で取締役会が予め定める期間、譲渡制限を課し、当該期間の満了をもって制限を解除するものとしています。但し、任期満了、死亡、その他正当な理由により退任した場合、譲渡制限を解除するものとしています。
 ― 譲渡制限期間中に法令違反その他当社取締役会が定める事由に該当する場合、割当株式のすべてまたは一部を当社が無償取得することができるものとしています。

■監査役の報酬などについて

監査役の報酬などは、固定報酬のみとしており、当社の定める一定の基準に従い、監査役の協議により決定しています。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

当社は、中長期的な企業価値向上に向け、市場ニーズを先取りし、社会のお役に立つ商品・サービスの提供に取り組むとともに、資本コストを意識した経営に注力しております。
具体的には、自己資本利益率(ROE)の目線として、2026年~27年頃にROE6%の達成、また中長期的には更なる向上をめざし、収益性の改善、政策保有株式を含めた保有株式圧縮による自己資本の圧縮、基盤投資に加え、成長に向けたR&D、M&Aへの積極投資、配当及び、機動的な自己株式取得等の株主還元、市場との対話を柱として、企業価値向上に取り組んでいきます。 詳しくは以下をご参照ください。

2024年3月期決算プレゼンテーション

取締役会の実効性およびその評価

当社では、取締役会の実効性に関し、社外取締役や監査役を中心にアンケートやインタビューを実施し、加えて、その実効性向上に向けた議論を行っております。それらの結果は以下の通りです。

■評価

1)取締役会は、率直に意見を述べやすい雰囲気があり、建設的な議論が活発に行われている。
2)執行が抱えている課題、リスク等が社外役員に対してもオープンに開示され、健全な取締役会の運営がなされている。
3)重要案件については複数回にわたり報告・議論がなされ、決議までの間に十分に審議が尽くされることが定着しており、適切な意思決定や経営監督など、取締役会は有効に機能している。

■さらなる実効性向上に向けた意見
1)コンプライアンスやリスクへの対応状況に関するモニタリングを引き続き、定期的に行っていくべき。
2)中長期的な成長に向けた事業や財務に関する戦略に加え、M&Aや投資に対する事後評価に関する報告を増やしてはどうか。
3)重要テーマに関しては、取締役会とは別に、各事業部門の執行トップを交え、ざっくばらんに議論する場があるとよい。
このように、取締役会の実効性は担保されているとの評価を受けた一方、引き続き、さらなる実効性向上に向けて取り組んでまいります。

監査役・監査役会

当社における監査役は4名であり、常勤監査役2名と社外監査役2名で構成しています。

各監査役は取締役会に出席して適宜意見を述べるとともに、常勤監査役はその他重要な会議への出席、取締役などからの職務の執行状況についての報告、さらには本社、主要な事業所および子会社への往査などを通じて経営状況の監視、助言に努め、内部統制の維持・向上に寄与しています。
また、会計監査人や内部監査部門とも適切に連携しています。

毎月開催する監査役会では、常勤監査役による監査実施状況などの情報を社外監査役と共有するとともに、取締役などから重要な事業の状況の報告、また、会計監査人から監査上の主要な検討事項の内容および決定理由などの報告を受けています。

また、監査の方針および監査計画、会計監査人の監査の方法および結果の相当性などの重要事項を協議・決定しています。

コーポレート・ガバナンス強化の取り組み
  • 1971年 事業部制の導入
  • 2006年 取締役数のスリム化(30名→17名)
    執行役員制度導入
  • 2010年 独立役員の指定
  • 2016年 「役員人事委員会」「役員報酬委員会」を設置
    取締役数のスリム化(17名→11名)
  • 2017年 取締役会の実効性評価の実施
  • 2019年 役員制度を改定し、役員数と階層を削減
  • 2022年 取締役会構成の見直し(独立社外取締役が3分の1以上)
  • 2023年 「役員人事委員会」「役員報酬委員会」を「役員人事・報酬委員会」に改組し、その委員長を独立社外取締役へ変更
  • 2024年 チーフオフィサー(CxO)の設置
    女性取締役の就任

政策保有株式

政策保有に関する方針

当社は、政策保有株式について、その保有の合理性が認められる場合を除き、保有しないことを基本方針としています。
一方、持続的な企業価値の向上をはかるため、事業戦略上の重要性、取引先との事業上の関係維持・強化などの連携が不可欠だと考えており、事業戦略上必要な株式は保有します。

保有の適否検証

毎年、政策保有株式について、保有のねらいおよび保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかなどを取締役会で検証しています。具体的には、毎年、主管部署への保有意義調査から保有意義の低い銘柄を選定し、売却可否を検討するとともに、発行体の収益性の指標や資本コストと比べた投資リターンといった定量的情報に基づく検証を実施しています。この検証の結果、当社の基準を下回った銘柄については、保有意義を再検証し、売却の方向で検討しています。
2024年3月期は、2銘柄の売却を実施しました。

議決権の行使

投資先の経営方針を尊重した上で、中長期的な企業価値向上や、株主還元姿勢、コーポレート・ガバナンスおよび社会的責任の観点から議案ごとに確認して、議決権の行使を判断します。

内部統制

内部統制評価のしくみ(J-SOX)

内部統制評価のしくみ(J-SOX)

当社は会社法に基づき、2006年5月に「内部統制の整備に関する基本方針」(以下、「基本方針」)を取締役会で決議し、各部門の年度方針や日常管理に織り込んだ上で、コンプライアンス、リスク管理、業務の有効性・効率性の徹底に取り組んでいました。しかし、エンジン国内認証問題の発生を受け、原点に立ち返り、二度とこうした問題を起こさない会社として再出発すべく、再発防止に向けた取り組みを進めるとともに、基本方針も見直すこととし、2024年4月に取締役会で決議しました。

当社は二度と過ちを起こさないために、間違いがあれば気づき、立ち止まり、全社員で改善できる風土を醸成します。また、リスクに適切に対応し最適な経営資源配分を行うための組織・体制を構築し、実際の業務執行の場においては、誠実を貫き正しいモノづくりを行うため、そのプロセスの中に牽制構造も含む問題発見と改善のしくみを組み込むとともに、それを実践する人材の育成に努めていきます。

そして、毎事業年度末に運用状況の評価を行い、必要に応じてしくみの見直し、日常管理の徹底など、次年度に向けた取り組みを確認します。

さらに当社は、金融商品取引法(J-SOX法)に基づき、財務報告の信頼性確保に向けた内部統制システムの構築と適正な運用を行い、その整備・運用状況については、内部監査部門が点検し監査法人による監査を受けています。その対象会社は、豊田自動織機グループから、財務報告の信頼性におよぼす影響の重要性を考慮して決定しています。2024年3月期現在の当社グループの財務報告に係る内部統制は有効であると判断し、内部統制報告書を2024年6月に提出しました。なお当社の内部統制報告書については、監査法人から適正である旨の監査報告が提出されています。

コンプライアンス

基本的な考え方

当社は、コンプライアンスを法規など定められたものだけでなく、倫理や社会常識を守ることも含むものとし、経営トップのリーダーシップのもと、豊田自動織機グループ全体でコンプライアンスを推進していくことが重要と考えています。

従来CSR委員会および下部組織のコンプライアンス分科会を設置して活動に取り組んできましたが、2024年4月1日付でこれを改組し、新たに「コンプライアンス委員会」を連結グループ全体のコンプライアンス統括推進組織として設置し、グローバル・チーフ・コンプライアンス・オフィサー(GCCO)を委員長として運営しています。具体的には、当社グループ全体のコンプライアンス方針を策定し、重要なコンプライアンスリスクに関する情報(新法や法改正動向など)その他、世の中の変化を把握し、適時適切な対応を行っていきます。また、認証法規や贈収賄・腐敗、独占禁止法違反を含め、当社グループの重大な問題は速やかにGCCOおよびコンプライアンス委員会へ報告される体制を整えています。

当社グループの重大コンプライアンス違反件数

グループ行動規範の策定・教育周知の徹底

当社は、コンプライアンス(贈収賄・腐敗、利益相反の禁止、独占禁止法遵守など)、人権尊重、安全・健康、環境保全など、従業員が守るべき行動を「豊田自動織機グループ行動規範」にまとめ、役員および全従業員に配付し、集合研修などで周知しています。国内外の連結子会社においても、各社の業種・企業文化に合わせた行動規範(海外では Code of Conduct)を策定し、年1回の教育・啓発を全社で実施しています。

また、エンジン国内認証問題に関する特別調査委員会の調査報告書にて「管理職の機能不全」の指摘を受けたことや反省を踏まえて、2024年2月には管理者コンプライアンス研修を新たに開設し、管理者層にコンプライアンス推進の役割や職場マネジメントにおける双方向コミュニケーションに関する実践的な研修を実施しています。今後は、事務・技術職のみならず技能職にも対象範囲を拡大していくことを検討中です。

その他、当社および国内連結子会社の従業員のコンプライアンスに対する理解を一層深めるため、eラーニング教材を50テーマ(2023年度に新たに「法規認証入門」および「独占禁止法(得意先・仕入先との関係)」を追加)、コンプライアンスミニテストを48テーマ作成・配信し、自主的に学べる環境を整備しています。

■当社、国内連結子会社および海外連結子会社における行動規範教育・啓発実施率:100%

豊田自動織機 行動規範
社員一人ひとりに配付されているカード。
行動規範へのQRコードや内部通報窓口の連絡先などの情報を掲載。

eラーニングのテーマ例

コンプライアンス、法規認証、独占禁止法(カルテル、得意先・仕入先との関係)、贈収賄防止、人権、ハラスメント、安全行動、労働災害、メンタルヘルス、環境保護、機密管理、交通安全、製造物責任、会計処理など

eラーニング受講者数(延べ)(単体)

贈収賄防止の取り組み

贈収賄についてはこれを禁止・防止するため2014年に「贈収賄防止グローバルガイドライン」(腐敗指数の高い国では当該国の法律に準拠した国別の規程)を策定しています。

また、当社グループの方針を社内外に向けてより明確にするため、2023年3月には、「豊田自動織機グループ贈収賄防止方針」をグローバルガイドラインの上位方針として策定し、各国・地域で周知啓発に取り組んでいます。

新しいウインドウで PDF を開きます 豊田自動織機グループ 贈収賄防止方針 PDF[83.7KB/1ページ]

独占禁止法遵守の取り組み

独占禁止法については、当社の従業員が競合他社と接触する場合の事前・事後の確認・審査を制度化し、独占禁止法への抵触が疑われるような行為をしないよう周知しています。さらに2015年度からは、独占禁止法遵守月間を設け、競合他社との関係や取引先との適正取引(各種コスト上昇による環境変化にも取引先と真摯に対話する必要性など)について関係部門に対する独占禁止法遵守の啓発を行っています。

また、国内外の連結子会社においては、各国・地域の法令などに応じて、カルテルなどの独占禁止法の違反を防止するための教育・啓発に取り組んでいます。

内部通報制度による問題の早期発見・未然防止

当社グループでは、従業員やサプライヤーなどがコンプライアンスに関して、いつでも匿名で通報・相談できる内部通報窓口(ヘルプライン)を地域ごとに設け、弁護士事務所や社外の専用ウェブサイトなどを通じて通報・相談を受け付けています。2023年度は、当社および国内外の連結子会社において、労務管理・職場環境・倫理などに関する通報・相談が245件寄せられ、そのうち74%が労務管理・職場環境に関する内容でした。受け付けた案件は、社内規程に基づいて、内部通報担当部署などが、通報者のプライバシー保護と、通報者への不利益禁止を徹底して、事実関係を調査し、対応しました。

継続して内部通報制度の周知と改善を行い、問題の早期発見・未然防止をはかることで、「社会からより信頼される企業づくり」を目指します。

内部通報窓口相談件数

【トピック】「コンプライアンスオフィサー ホットライン」の設置

2024年2月、グローバル・チーフ・コンプライアンス・オフィサー(GCCO)の深川経営役員と直接コミュニケーションをはかることができる「コンプライアンスオフィサー ホットライン」を開設しました。

これは、既存の内部通報窓口とは別の、従業員の新しい相談窓口で、このホットラインを通じて、記名と匿名のどちらでも、GCCOへ直接、コンプライアンスに関する相談ができるようになりました。記名式のホットラインでは、GCCOが相談者に直接返信しています。

また、コンプライアンス意識の啓発のため、GCCOのコンプライアンスへの思いを、コラム「コンプライアンスの窓」として配信しています。

コンプライアンスオフィサー ホットライン
ホットラインイントライメージ

コンプライアンス意識調査

当社では、従業員に対して定期的にコンプライアンス意識調査を実施し、コンプライアンス活動の浸透度、社員行動規範や内部通報窓口の認知度などについて実態把握および改善を行うことで、より効果的なコンプライアンス体制の構築に努めています。2024年4月1日以降は、従来3年に一度実施していた意識調査について頻度を上げて実施し、対象者の範囲を拡大して実施する予定です。

当社グループでの取り組み

当社の連結子会社では、コンプライアンス委員会(日本)とコンプライアンスオフィサー(海外)を設け、当該組織・責任者を中心に各地での自律的な活動を促進しています。北米、欧州、中国、アジア・オセアニアの各地域では、定期的なコンプライアンス会議を開催し、地域内での連携活動も進めています。

主なコンプライアンスオフィサー

主なコンプライアンスオフィサー

2023年度に中国で、同国内の9社が参加するコンプライアンス責任者会議を開催しました。各社のコンプライアンス活動や最新の法令動向などについて情報を共有し、中国でのコンプライアンス活動の振り返り・意見交換を実施しました。会議後も、各社が相互に連携しながら活動を進めています。

中国でのコンプライアンス責任者会議
中国でのコンプライアンス責任者会議

税務ガバナンス

基本的な考え方

当社グループ は、「基本理念」に基づき、誠実に社会的責任を果たすことで、社会から広く信頼を得て、長期安定的に企業価値を向上させることを経営の最重要課題としています。
事業活動を行う各国・地域の税務関連法令等を遵守し適正な納税を行うことにより、社会への貢献と企業価値の維持及び向上に努めます。

税務基本方針

当社は上記基本的な考え方の下、「豊田自動織機グループ税務基本方針」を策定しました。

社員行動規範に基づき適正な納税・税務対応を行うことを目的として、会計・税務に関する研修やeラーニングなどを通じて従業員に対する教育・啓蒙活動を必要に応じて行っていきます。

新しいウインドウで PDF を開きます 豊田自動織機グループ 税務基本方針 PDF[469.1KB/1ページ]

情報セキュリティ

基本的な考え方

当社は「お客様や従業員、取引先などの個人情報、技術・営業に関わる情報は守るべき資産である」という認識に基づき、情報資産の保護とその管理強化を推進することを目的として、情報セキュリティ基本方針を定めています。

情報セキュリティ基本方針

  1. 法令遵守
    情報セキュリティに関連する法令等を周知、遵守する。
  2. 安定した基盤の維持
    情報資産を適切に管理・保護し、また情報セキュリティに関する教育・啓発を継続的に行い、安定した経営基盤の維持に努める。
  3. 安全な商品・サービスの提供
    商品・サービスの開発・設計・製造等、自社の事業活動において、情報セキュリティの対策を講じることにより、お客様や社会に対し、安全な商品・サービスを提供する。
  4. 情報セキュリティマネジメント
    情報セキュリティを運用・管理するためのガバナンス体制を構築し、継続的な推進及び改善を行う。

推進体制

「リスク管理委員会」(委員長:リスク統括責任者※1)の下部組織として「情報セキュリティ会議」(議長:ITデジタル推進担当役員)を設置し、情報セキュリティリスクの低減に取り組んでいます。

情報セキュリティ会議での取り組みを徹底するため、当社の各部門で機密管理責任者※2、機密管理推進者※3を選任しています。

国内外の連結子会社へは、各地域で定期的にIT管理者会議を開催し、社内外の事例および対策情報の共有や方針の展開などにより、当社グループ全体でセキュリティレベルと意識の向上に取り組んでいます。

※1:リスク統括担当役員
※2:各部門の部門長
※3:部門長が指名した部内の推進担当者

リスク管理委員会下の情報セキュリティの推進体制

リスク管理委員会下の情報セキュリティの推進体制

情報セキュリティマネジメント

情報セキュリティ監視とインシデント対応

サイバー攻撃の早期検知と迅速な対応のため、当社グループのパソコンなど全端末に対する24時間365日のセキュリティ監視体制およびインシデント対応体制を構築しています。また、脅威情報については国内外の連結子会社と共有し、各社内での注意喚起を速やかに実施しています。

重大インシデントの発生件数:0件

グループにおけるガバナンス強化

オールトヨタセキュリティガイドライン(ATSG)※4に基づき、当社および国内外連結子会社の情報セキュリティの取り組み状況を年1回点検することにより、情報セキュリティレベルの継続的な維持・向上に努めています。

また国内関係会社連絡会、サイバーセキュリティサミットの開催による取り組みの共有や、グループ会社への個別訪問・対策支援の活動を通じて、すべてのグループ会社におけるセキュリティレベルの均質化・高度化を推進しています。

※4:NIST CSFやISO27000シリーズに準拠したトヨタグループでのセキュリティガイドライン。

新たな働き方への対応強化

リモート勤務やクラウド利用の日常化などによって新たに生ずるリスクへの構えとして、多様化した社内情報の持ち出し経路をAIで監視するしくみを新たに導入しています。また機密情報(個人情報含)の漏えいを未然に防ぎ、安全にクラウドサービスを利用するためのルールや管理のしくみづくりを進めています。

情報セキュリティ意識の啓発強化

各部門の業務に合わせたリスク管理を自律的に実施する組織づくりに向けて、その活動主体となる機密管理責任者・推進者向けに内容を拡充した教育を行っています。

また各従業員の意識向上のために、オリジナルのキャラクターを用いて各種のチャネルを通じた情報発信を継続して行い、その理解・浸透をはかっています。

拠点での教育
拠点での教育
啓発サイト“CyberNow
啓発サイト“CyberNow"
2023年度の取り組み
  • サイバーセキュリティサミット開催
  • 内部情報漏えい検知システム導入
  • クラウドサービス利用状況の確認
  • システム企画でのセキュリティ対策盛り込み
  • 製品セキュリティ推進体制整備・法規制強化対応
  • 機密管理責任者・推進者教育の拡充
  • キャラクターを活用した啓発情報発信
  • セキュリティイントラネットリニューアル
  • 国内製造関係会社の個別訪問・対策支援
  • 国内関係会社向けセキュリティサービス拡充

リスク管理

基本的な考え方

当社は、会社法に基づく「内部統制の整備に関する基本方針」に沿って、リスク管理に関する規程や体制の整備を行っています。リスク管理については、次の項目を基本として取り組んでいます。

  1. リスクの未然防止や低減への取り組みを日々の業務の中に織り込み、その実施状況をフォローすること。
  2. リスクが顕在化した場合には、迅速かつ的確な緊急対応により、事業や社会への影響を最小化するための適切な行動を徹底していくこと。

推進体制

当社は毎年、品質、安全、環境、人事労務、輸出取引、災害、情報セキュリティなどにおけるリスクの未然防止や低減への取り組みを、各事業部および本社各部門の活動方針に織り込み、推進しています。その実施状況については、機能別の会議体で評価・フォローしています。従来、CSR委員会で全社のリスク管理に取り組んできましたが、リスク管理の取り組みをさらに強化するため、2024年4月1日付で新たに「リスク管理委員会」を設置し、リスク統括責任者(リスク統括担当役員)を委員長として運営しています。

リスク管理委員会で、全社に関わるリスクから特に重点となるもの(重点リスク)を洗い出し、各機能会議体での対策や、複数の機能にわたる新たなリスクへの対策につなげる活動を推進しています。

こうした重点リスクへの対応を含め、各事業部および連結子会社のリスク管理レベルの向上を支援するため、本社の安全、品質、環境などの各機能部門は、連結子会社を含むグループ全体的な視点で規則やマニュアルを制定し、業務監査や現場点検などで確認・フォローを行っています。

当社では、「リスク対応マニュアル」を整備し、平時のリスク管理活動の他、リスクが顕在化した有事の際の初動として、経営トップへ迅速に報告し、社会や事業活動への影響の大きさを見極め、適切な対応で被害を最小化するための基本ルールを定めています。内容については、事業や取り巻く環境の変化を考慮して都度確認し、必要に応じて改訂しています。

リスクマネジメント体制

リスクマネジメント体制

リスクマップ

リスクマップ

想定される震災への対応

当社は、大規模地震の発生による影響を重要なリスクとして捉え、事業継続計画「BCP」を策定しています。「人命第一、地域優先、迅速復旧」を基本方針として、事前の備えである「減災対策」、災害後の「初動対応」および「生産復旧」の3つの対策に全社で取り組んでいます。

防災体制

有事の際には、初動対応から生産復旧へ迅速に移行できるよう、防災体制の強化に努めています。

防災対策総本部は、本社機能部門で構成され、工場などからの情報集約と、それを踏まえた全社の意思決定を行います。

防災体制

家庭の防災の推進・啓発

2016年度より、災害時の自宅での被害回避をはかる家庭の防災対策として、「家具の転倒防止・避難経路の確保、家族間の連絡手段・集合場所の決定、防災備品・備蓄品準備」の3項目を実施するよう、全従業員とその家族へ啓発を進めています。

2024年1月1日に発生した能登地震を受けて、改めてともに働く仲間に、事前準備の重要性を継続的に伝えていきたいと考えています。

防災に関わる人材育成の取り組み

1.防災対策総本部訓練

全社を統括する防災対策総本部の重要な役割の1つとして、社内外の被災情報集約、迅速な意思決定と全社への展開があげられます。2023年度は防災対策総本部を構成する本社各部門に、有事の際に使用する非常用ネットワーク(モバイルルーターや屋外WiFi)、を設置し工場内の電動車(HEV、BEV、FCバス)を非常用電源として、実際に使用する機器操作訓練を実施しました。今後も有事を想定し、いかなる場合でもスムーズに活動できるように訓練を実施していきます。

2.全社一斉防災訓練

2022年度より訓練時間・範囲を拡大し、より実効性の高い防災訓練を全社一斉で実施しています。

刈谷工場では操業停止になった場合を想定し、会社が提供する周囲の被災情報を確認して、帰宅または避難所待機を選択する訓練を実施しました。訓練で確認した新たな課題の改善を行い、ともに働く仲間やお客様のより一層の安全・安心確保に向けて継続的に訓練を行っていきます。

3.新技術の活用

東知多工場上空
東知多工場上空
ドローン飛行訓練
ドローン飛行訓練

臨海部に隣接する東知多工場と碧南工場では、地震や台風に伴う津波や高潮などの災害リスクを抱えています。そのリスクを少しでも低減するため、両工場ではさまざまな技術を活用して対策を進めており、2023年度はドローンを導入しました。災害時に上空から周辺の状況が広範囲に確認できるため、次の対応が素早く、的確に判断できます。今後も、各工場において、新しい技術を活用しながら、それぞれの環境に必要な備えを検討していきます。

今後の取り組み

近年、各地で風水害や地震が頻発しており、いつどのような状況で被災しても、円滑な初動対応が取れること、防災対策総本部機能の継続を可能とすることなどが重要だと考えています。この考え方に基づき、引き続き防災のしくみの実効性向上に努めていきます。

知的財産活動

基本的な考え方

当社は、社是である豊田綱領の「研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし」に基づき、積極的な研究開発投資のもと、その成果である発明やノウハウなどの知的財産の保護・活用を通じて、各事業の戦略に活かしています。また、国内外で知的財産権を確実に取得し、侵害防止に努めるとともに、知的財産の保有を通じた企業価値の向上に取り組んでいます。

推進体制と特許出願件数

当社は、繊維機械をはじめ、産業車両、自動車関連などさまざまな分野に事業を拡げており、その事業の特性に応じた事業戦略に沿って、自社や他社の知的財産に関する情報などを、市場での当社の位置づけや競合関係を含めて総合的に分析し、知的財産戦略を策定しています。

社内の発明創出会議などで、守るべき技術領域を意識した発明の発掘、創出を行うとともに、他社の知的財産侵害リスクの調査結果を、開発段階ごとの研究開発審査会で報告し、担当役員が審査、承認する体制を整備しています。また、国内外の開発拠点を持つ連結子会社とも連携し、当社グループ一丸となった知的財産の資産形成、侵害リスクの回避に取り組んでいます。

このような推進体制のもと、2023年度は、約700件の特許を出願し、2024年3月末時点で、国内外で約5,700件の特許を保有しています。

特許出願・保有件数(単体)

産業車両の自動化技術の開発における知財活動

図1:自動運転フォークリフト
図1:自動運転フォークリフト
図2:自動運転トーイングトラクター
図2:自動運転トーイングトラクター
図3:特許出願対象の自己位置推定の各種方式
図3:特許出願対象の自己位置推定の各種方式

当社は、2024年問題に代表される物流業界の人手不足・労働力不足解消に向け、フォークリフト、トーイングトラクターなどの産業車両の自動化技術の開発に注力しています。自動走行では、車両の自己位置を精度よく推定する技術が求められ、一方、自動荷役では対象物(トラック、荷物、パレットなど)の位置を正確に検知する技術が必要となり、それぞれの技術分野ですでに50件以上の特許出願を行い、権利保護をはかっています。

自動運転のフォークリフトおよびトーイングトラクターは、それぞれお客様の倉庫・設備、空港施設において、実証試験を実施しており(図1・2を参照)、そこで明らかになった実地走行に基づく技術的課題の解決策を特許出願に結び付ける活動(図3を参照)を推進しています。当社は、今後も引き続き、自動化技術における知的財産の戦略的な取得と活用を通じ、競争優位性の確保に努めていきます。