CSR重要課題(マテリアリティ)

当社は創業以来、「豊田綱領」(社是)のもと、世の中のお役に立つことを基本に、広く事業を行ってきました。
昨今の環境変化を踏まえ、現在当社が取り組むべき社会課題をCSR重要課題(マテリアリティ)として明確に定義し、その解決に向け、実行していきます。
なお、CSR重要課題の取り組みに対する目標値達成度評価の一部を役員賞与算定の参考指標としています。

CSR重要課題策定のプロセス

事業を通じた社会課題の解決に関する取り組み方針・目標・実績

事業を通じた社会課題の解決

地球温暖化防止

循環型社会への貢献

2030年ビジョン(めざす姿)への貢献:クリーン・ゼロエミッション
事業活動でのCO2排出や廃棄物の削減、環境配慮型製品の提供拡大などを通じた地球温暖化の防止と循環型社会を実現し、将来にわたって住みよい地球環境の維持・向上へ貢献

取り組み方針取り組み目標と活動目標値
(2025年度)
実績
(2022年度)
生産活動におけるCO2排出量削減 生産CO2排出量の削減 総排出量 ▲25% ※1
(2013年度比)
▲30%
(2013年度比)
再生可能エネルギーの導入 導入率 15% 15%
生産物流におけるCO2排出量削減 物流CO2排出量の削減 排出量原単位(単独) ▲11%
(2013年度比)
▲8%
(2013年度比)
製品技術開発によるCO2排出量削減 エネルギー効率のさらなる向上に寄与する技術開発 - -
生産活動における資源の有効活用 廃棄物排出量削減 排出量原単位(単独) ▲12%
(2013年度比)
▲17%
(2013年度比)
各国/各地域の水環境事情を考慮した水保全活動の推進 - -
資源を有効に利用するため、3R設計
(リデュース、リユース、リサイクル)
への取り組み
資源使用量削減と部品、素材のリユース、リサイクル推進 - -

※1 挑戦目標として、2030年度に2013年度比▲50%

主な取り組み

熱収支改善によるエネルギー消費量の低減

エンジンおよびその鋳造部品の生産拠点である東知多工場(愛知県)では、生産設備のエネルギー使用量を調査の結果、使用量の多いことが判明した加熱設備に着眼し、削減活動を推進しています。

同工場ではエンジン部品を製造するため工業炉におけるエネルギー使用量の低減が大きな課題の一つとなっており、これまでもさまざまな省エネ活動に取り組んできました。

2022年度は、炉へ投入したエネルギーと製造に使用される正味エネルギーのバランスに注目し、エネルギーのムダを洗い出し、効果的にエネルギー使用量を削減できないかと考え、取り組みを開始しました。

炉の中でも特にエネルギー使用量が多いアルミ溶解保持炉と鋳鉄熱処理炉を調査した結果、アルミ溶解保持炉では「炉体からの放熱」と「溶湯の汲みだし口からの放熱」、鋳鉄熱処理炉は「炉体からの放熱」と「ワークの置台であるトレーへの加熱」によるロスが大きいことが判明し、それぞれ対策を実施しました。
両方の炉でロスが大きいと判明した「炉体からの放熱」については、断熱パネルの貼付や遮熱塗料の塗布により放熱を低減しました。
アルミ溶解保持炉の「溶湯の汲みだし口からの放熱」は、蓋が汲みだし口を覆う範囲を広げるとともに、蓋の厚みを増やすことで断熱性を向上し放熱を低減しました。
鋳鉄熱処理炉の「ワークの置台であるトレーへの加熱」については、トレーの構造を見直し、強度を確保しつつ軽量化を実現し、加熱エネルギーの低減を実現しました。

これらを含む包括的な対策により、CO2排出量を年間約242トン削減することができました。

トレーの軽量化による加熱エネルギーの低減

2色塗装工法改善によるマスキング材料使用量低減

マスキング面積

車両の生産拠点である長草工場(愛知県)では、資源使用量低減の取り組みを進めています。

従来、同工場の塗装工程において、RAV4の2色仕様のボデー塗装については、車両下部を塗装した後にマスキングを施し、ルーフ部を塗装することで色分けしています。
しかし、この工程順序では、面積の広い車両下部にマスキングを施すため、多くのマスキング材料を使っていました。そこで、ルーフ部を先に塗装し、マスキング範囲を車両下部からルーフ部に変更することで、マスキング面積を縮小できると考え、改善活動に取り組みました。

塗装の工程順序変更による課題を検証したところ、「見切り線」と呼ばれる「塗装間の段差」の向きが変わることで、車両ドア開閉時に部品干渉による塗膜剥がれが発生し、また、見切り線の見栄えが悪化することが判明しました。
これらの課題は、設計、品質保証、製造などの部門が協力して設計変更に取り組み、見切り線の位置を従来よりも奥に移動することで解消することができ、マスキング材料の使用量を74%低減することができました。

今後も製造現場だけでなく、設計等の源流部門までが一丸となり、材料使用量の低減に取り組んでいきます。

新たな価値の創出

2030年ビジョン(めざす姿)への貢献:新たな価値の創出、スマート
新たな価値を創出する技術革新やイノベーションで社会課題を解決し、スマート社会とより豊かな生活の実現へ貢献

取り組み方針取り組み目標と活動目標値
(2030年度)
実績
(2022年度)
目標
(2023年度)
新たな価値を創出する新技術の開発促進 電動化・自動化の研究開発費比率 70%以上 54.1% 58%
コア技術の伸長とともに、
パートナーの新たな知見獲得による、
既存ビジネスの周辺領域への拡大、
新事業領域での技術・商品を開発・提供
周辺領域や新事業領域の拡大 売上額 1兆円 - -
-環境問題を含めた社会課題解決に貢献する
新たな技術・商品の開発
-新たな物流自動化技術・商品の開発と
売上拡大(産業車両事業) 自動化商品売上(伸び率)
倍増(100%)
(2020年度比)
50.1%増 71%増

主な取り組み

トラック荷役対応自動運転フォークリフトの開発

トラック荷役対応自動運転フォ-クリフト
トラック荷役対応自動運転フォ-クリフト

2024年より施行される働き方改革関連法案により、トラックドライバー不足の深刻化が予想されており、それに伴い整備される新たな中継点(物流結節点)でのトラック荷役作業の効率化・省人化が急務となっています。
また、最先端の物流センターにおいても、入出荷のフォークリフト荷役作業は自動化が遅れています。
これらの課題に対し、AI搭載による、トラックや積荷の位置・姿勢を自動で認識し、自律的に走行して荷役作業を行う世界初の技術を導入した自動運転フォークリフトを開発し、国際物流総合展2022に出展しました。

多くのお客様の物流現場に最適なソリューションとして提案し、「物流の2024年問題」解決に貢献していきます。

新型FCフォークリフトの発売

新型FCフォークリフト
新型FCフォークリフト

6年ぶりにFCフォークリフトのFCシステムを大幅に改良し、現行車と比べ、燃料電池システム(以下、FCシステム)コストの大幅低減により車両価格を30%低減するとともに、耐久性※2を2倍※3に向上させた新型燃料電池フォークリフト(以下、FCフォークリフト)を発売しました。

"わたしたちが暮らす地球にどこまでもやさしく"、そんな想いから生まれたFCフォークリフトは、稼働時にCO2を一切排出しない優れた環境性能と、わずか3分で水素燃料充填が完了する高い利便性を備えた「次世代のエコ・フォークリフト」です。
当社は、物流業界からカーボンニュートラル・水素社会の実現に貢献してまいります。

※2:FCシステムの出力性能維持期間(出力が出荷時から80%以上維持できる期間)
※3:JIS D6202エンジン車燃料消費測定パターン60Sに基づく。自社調べ。

安全・安心、快適な商品・サービスの提供

地域社会への貢献と共生

2030年ビジョン(めざす姿)への貢献: 安全・安心 、快適
お客様をはじめ、さまざまなステークホルダーのニーズを先取り、安全に安心して快適に利用いただける商品やサービスを提供するとともに、社会の一員としての務めを果たし、ともに発展することで、温かい社会づくりへ貢献

取り組み方針取り組み目標と活動目標値
(2030年度)
実績
(2022年度)
目標
(2023年度)
電動化関連商品の販売拡大(全事業)
売上高に占める電動化関連商品の比率
70%以上 42.2% 46%
高機能で環境にやさしく、
社会インフラにも活用可能な電動化関連商品・サービスの拡大
-静粛性・快適性に優れた高効率で省電力な電動コンプレッサーの提供(自動車事業)
-クリーンで高品質な燃料電池ユニットおよび車載電池の提供(自動車事業・産業車両事業)
-災害時など社会インフラにも活用可能な、車載を含めた電源関連商品の提供(自動車事業)
高品質で安全な商品・サービスの提供と、
そのための体制の維持向上
製品リスクアセスメント実施(対象製品)
実施率(単独)
100% 100% 100%
社会の一員として、地域に根差し、
ともに発展できる活動の継続的な推進
品質教育の推進
対象者の研修受講率(単独)
100% 92.3% 100%
社会貢献活動の推進 支出額/参加者数 - 9.1億円/28,500名 -
-地域の生物多様性保全への寄与
-その他の地域貢献活動推進

主な取り組み

ニーズの多様化により、エアコン用部品から電動車の基幹部品へ

電動車が拡大する中、BEVは車両としての新たな課題が生まれていることに伴い、電動タイプのコンプレッサーへのニーズも多様化しています。
このような状況に対し、当社はこれまで培ってきた商品開発力を活かし、新たなニーズに対応する新商品を投入しています。

電動車は、暖房時のエンジン排熱に代わる熱源確保が必要になり、冷房に加え暖房時もコンプレッサーを稼働するニーズが出てきました。
大気から熱を取り込むヒートポンプ式暖房が追加されたことで、コンプレッサーの稼働時間の延長や使用範囲の拡大が必要なため、電動コンプレッサーの信頼性向上や、車両の航続距離への影響を抑えるための高効率化に努めています。

また、車両の高出力運転時および急速充電時の電池の性能劣化や短寿命化を防ぐため、ヒートポンプ空調に加え、電池冷却機能も担う必要があり、電動車の基幹部品として、大容量化した電動コンプレッサーを開発、市場投入し、幅広いラインナップで、さまざまな電動車のニーズに対応しています。

電動コンプレッサー

鳥の楽園「バードピア」の開設

「バードピア」の開設

絶滅危惧種の野鳥の誘致をめざし、当社東知多工場の敷地内で鳥の楽園「バードピア」を開設しました。
東知多工場バードピアは「自然と共生する工場」実現のため、「鳥類の安定した生息環境の確保」と「ヒトと鳥類のゾーニング」をめざし、鳥類の生息域拡大のためだけでなく、従業員や家族が生物多様性について学ぶ環境教育の場として活用できるように整備を進めてきました。
バードピアを「草地」、「樹林」、「湿地」、「砂れき」の4つのゾーンに分け、多様な環境を整備するとともに、観察小屋や遊歩道を設けることで、鳥類の生息域を脅かすことなくヒトが生き物を身近に感じられるようにしています。

これまでに、約50種の鳥類の飛来を確認しており、今後も衣浦湾の生態系拡大に寄与できるよう取り組んでいきます。

工場敷地内にインセクトホテルを設置

インセクトホテル

スウェーデンの産業車両生産子会社であるTMHMSは、工場敷地内に生物多様性エリアを設けており、そのエリア内に昆虫や微生物などのための「インセクトホテル」と呼ばれる人工のすみかを設置しました。
昆虫や微生物が住みやすい環境を整備することにより、それらを餌とする鳥や小動物が集まり、生態系のバランスが整うことをねらいとしています。

バイポーラ型ニッケル水素電池の搭載車種の拡大

トヨタ自動車のデュアルブーストハイブリッドシステム
トヨタ自動車のデュアルブーストハイブリッドシステム

優れた走行性能と環境性能を両立させるバイポーラ型ニッケル水素電池は、アクアに続いて2022年度はクラウン、レクサスRXにも搭載され、今後も需要拡大に対応していきます。

カーボンニュートラルに向け、さまざまな取り組みを進める中、HEVへの搭載拡大を可能とするバイポーラ型ニッケル水素電池で、トヨタ自動車の電動車の普及に貢献していきます。

事業活動の基盤に関する取り組み方針・目標・実績

事業活動の基盤

安全・健康な職場

多様な人材の活躍

持続可能な調達

コンプライアンスとリスク管理

取り組み方針取り組み目標と活動目標値
(2030年度)
実績
(2022年度)
目標
(2023年度)
重大災害の撲滅
-重大災害件数 0件 0件 0件
-休業災害度数率(単独) 0.00 0.06 0.00
誰もが安全・健康で働ける職場づくり 多様な人材の活用
-女性管理職比率(単独) 3.6% 1.7% -
-障がい者雇用率(単独) 2.7%超 2.57% 2.4%超
誰もが機会均等に持てる力を伸ばし、
発揮できる環境づくり
サプライチェーン全体の健全な取引維持と体制強化
-対象サプライヤーへのサステナビリティチェック実施率(単独) 100% 100%
(1,140社)
100%
社会から信用・信頼され、
必要とされる存在であり続けるための基盤確立
重大コンプライアンス違反の撲滅
違反件数
0件 1件 0件
リスクベースでの適正なリスク管理活動の推進
-BCPの実効性向上
-サイバーセキュリティリスク対応
重大インシデント件数
0件 0件 0件

労働災害の再発防止と未然防止による安全な職場づくり

2019年の重大災害発生以降、「機械動力による挟まれ・巻き込まれ災害ゼロ」をめざし、安全装置を無効化して設備内に進入する際は、確実に動力遮断するしくみを新設・既設設備に導入しています。
また、設備安全保証体制(設備停止範囲・制御区分の見える化や必要なスキルを持った設備安全検査員による安全機能チェックなど)を再構築し、物的・管理的対策のレベルアップを継続的に推進しています。

それらに加え、作業中の近道・省略行為、危険軽視など、作業者自身の不安全行動に伴なう災害を未然防止するための取り組みも重要と考え、人的対策の一環として、2022年度より個人の行動特性(危険に対する感受性と敢行性※4)を定量的に把握する方策に取り組み始めました。
この取り組みを今後も継続し、人的要因による災害・疾病の未然防止に繋げていきます。

今後も「異常が発生したら必ず止めて、本質的な対応(根本原因を取り除く)を実施する」という考え方に基づき、安全な職場・人づくりを継続していきます。

※4
危険感受性:危険を危険と感じ取れること。
危険敢行性:危険だと感じていても敢えて危険を受け入れた行動を取ること